東北復興博シンポジウム 2011.11.1
会場となった国連大学ウ・タント国際会議場=東京都渋谷区 文化を通じて被災者の自立的復興を応援する「文化復興会議」の一環として、復興社会について意見交換し、広く発信するためのシンポジウムを、国連大学サステイナビリティと平和研究所の共催、ユネスコ本部の後援で東京・青山の国連大学ウ・タント国際会議場で開催しました。
このシンポジウムでは、武内和彦・国連大学副学長が「地球村として考える復興支援の在り方」について、青木保・青山学院大学教授(前文化庁長官)が「復興における文化の役割」について、渡邉美樹・スクールエイドジャパン代表(ワタミ会長)が「陸前高田市での再起業支援の取り組み『経営塾』」をめぐって、城ノ内ミサ・ユネスコ平和芸術家(音楽家)がユネスコ本部からのメッセージと、2021年開催予定の文化による国際的な復興博開催について基調講演しました。
また、復興博の取り組みの中からファイト新聞応援企画、ALRISHA、文化復興会議を、協力プロジェクトとして、福島の被災動物の救援活動を続けている「にゃんだーガード」を紹介しました。
【武内和彦・国連大学副学長/国連大学サステイナビリティと平和研究所所長】
東日本大震災後、被害状況などの情報が十分に海外に届かなかったとの批判が多い。日本の声が正しく海外に伝わっていない。大震災で何が起きたか、日本人は何を思ったのか、これから復興をどうしていくのか、きちんと伝える努力をしてきたかを、検証する必要がある。日本に限定せず、国際的視点に立って防災と復興で助け合い、学び合うことが必要だ。
震災を理解し、対策を検討するのに、国内事例のみを引き合いに出すのは疑問だ。「もっぱら『阪神大震災とは違う』『千年に一度の大津波』という言い方が流布しているが、日本の中だけの視点で議論されることに不安を感じる。例えば、2004年のスマトラ沖地震で大津波がありました。被災者はどうしているのか、どのように復興しているのかと、今の日本人こそ考えないといけない。
国連大学は、震災対策や復興をめぐる研究交流などを通じて海外の経験や知見を共有し、新しい社会の在り方を示してきた。「キーワードは『resilience(回復力)』。恵みであり脅威でもある自然を生かし、人間の側が引くべきところは引く。そうした社会づくりが、自然と良い関係を保ち、災害時に被害を最小限に受け止めることになるのではないか。
中央環境審議会で、復興に貢献する新しい「三陸復興国立公園」を提案している。地盤沈下した低地で湿地再生を行うとともに、がれきで丘をつくり、高台造成で生じた表土を盛って緑化する。自然を素材にし、里山と里海を一体とした人と自然の関わりの再構築を目指す。
復興のために世界の知恵を取り入れ、海外に向かって発信することが必要であり、国連大学を役立ててもらいたい。経済のグローバル化が地域の画一化をもたらしている現在、いろいろな文化を多元的に理解するのが大事だと思う。
【渡邉美樹・ワタミ会長/「School Aid Japan」代表理事】
2011年11月、岩手県陸前高田市で経営を指南する私塾を開設した。被災地への物資提供とボランティア派遣の後、自分にできるのは経営指導だとあらためて確信した。「被災された方々が再び立ち上がる、そこに伴走したい」という思いだ。
2011年6月に陸前高田市の参与に就任した。早速8月に地元で開いた復興イベントでは約1万7千人がさまざまな特産品を売り買いし、元気な空間がよみがえった。「また何かやりたい」と皆さんに思ってもらうきっかけの場になった。
私塾では67人に2012年3月まで計6回、各3時間講義する。テーマは経営戦略や人材教育など。一対一の指導もして「店を出すのに銀行融資を受けたい」といった個別の相談にも乗る。受講生は本当に熱心に聞いてくださっている。3月、塾生たちが独り立ちして事業を起こし、街が復興していく日が待ち遠しい。
普通に生活している人は、困っている人に対して責任がある。
復興への道は始まったばかり。被災された方々が闘っている。そのことを忘れないように、これからも被災地に心を置いておくつもりだ。
【青木保・青山学院大学教授】
国連大学の会場には東日本大震災当時の被災地の新聞朝刊、号外が掲示された司会はフリーアナウンサーの松本祐香さん
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鍵はデザイン
復興博は、被災者の尊厳ある自立的復興、すなわち経済的復旧と「心の復興」を、文化を通じて応援するため、地元のさまざまな文化を発掘、再発見し、新しい復興文化を創造する場が必要と考えます。文化を通じて自立的復興を応援するためのさまざまな知恵、経験を交換する場として、「文化復興会議」を発足させました。
文化復興会議は、文化に関心を持ち、携わり、発信する人々が集い、議論・提案します。鍵となるのが「デザイン」です。復興における社会的課題を洗い出し、解決策をデザインし、それまでの地元の文化に外来の文化を取り入れ(デザイン)することで、より魅力的で新しい、しかもよりその地域らしい文化を創造することを目指します。
「文化復興会議」におけるデザインとは、復興する人々が持つ文化を再発見、再評価し、具現化するため、人と組織とお金を組み合わせ、古くて新しい価値を創造する行為です。